令和の米騒動 「農協悪玉説」は本当か?
2025年06月27日
コメ価格を高騰させた犯人探しが過熱している。疑われたのは農協だった。「民営化しろ」という声や「解体しろ」という過激な主張までが飛び交っている。
だが、批判の根拠となっている「農協悪玉説」は本当なのか。農協を「民営化」もしくは「解体」すれば、農業の問題は本当に解決するのか。世論が過熱したときこそ、冷静な判断が必要だ。熱狂と興奮の「令和の米騒動」の只中で、「農協悪玉説」と「農業問題の質」を探る。
コメの高騰 農協犯人説は間違い
令和5年は猛暑だった。各地で水不足も深刻化し、コメの作況指数が悪化して、くず米の比率が増加した。
令和6年8月には、宮崎県東部沖合の日向灘を震源とするM7・1の地震を受けて、気象庁は「南海トラフ地震臨時情報」を発表した。
国民に不安が広がると、コメの買いだめが発生した。猛暑による不作で、コメの在庫が少ない中での買いだめにより、コメの供給が追い付かない状態となった。
もう一つ、「コロナ禍」も忘れてはならない。令和2年3月13日に緊急事態宣言が発令され、街が閑散としたことは記憶に新しいはずだ。
外出自粛要請の発令で、外食産業は営業時間の短縮を余儀なくされて、コメの消費が一気に減った。
この時、農家も影響を受けている。需要が減った主食用米の生産は減らして、飼料用米などを増やしたのだ。
ところが、コロナショックが終息すると状況は一変する。外食産業は息を吹き返し、急減していた外国人観光客も令和5年には回復し、コメの需要が急激に高まった。
令和4年2月から始まったロシア・ウクライナ紛争も穀物の国際相場を上昇させる要因になっている。
このように、極めて予測が難しい複数の“災い”が重なり合って、「令和の米騒動」は発生していたのである。
ところが、マスコミやネットではコメを高騰させた犯人として叩きやすい農協がターゲットになった。
「コメの価格を吊り上げて利益をむさぼっている」、「利権で美味しい汁を吸っている」など、根拠に乏しいデマが流布され、農協は集中砲火を浴びた。
農協の組織の問題点を批判するコメントもあふれている。
だが、長い歴史を持つ組織ならば、課題の一つや二つは存在して当然だ。それを針小棒大に取り上げて「令和の米騒動」の原因のように叩いているのである。
農業の問題は、農協を民営化すれば全て解決するほど単純ではない。ましてや、農協を潰してしまえば、農業は壊滅的な状態に陥るはずだ。
気の毒なことに、農協でまじめに働く現場の職員たちが精神的に深いダメージを受けていると聞いた。
農家のため、国民の「食」を維持するために、農業の最前線で献身的に働く農協の職員が、デマに基づく誹謗中傷によって疲弊する姿は、あまりにも理不尽である。
では、農業問題は、どのように考えれば良いのか。歴史的な経過を踏まえながら考えてみたい。…続きは本誌で