豊かさを求めて若者が集う「世界遺産の佐渡島」へ
2025年04月27日
「佐渡島の金山」が世界文化遺産登録された佐渡市。目に見えて観光客が増えたという。これに浮かれることなく、行政が愚直に推進しているのが若者の移住、起業・創業、人材育成への支援だ。意欲ある市民や若者を支える施策を、2期目の舵取りに入った渡辺竜五市長に聞いた。
金山だけじゃないよ!
―1期目の課題を踏まえ、市政運営2期目の柱、方針を聞かせてください。
市長「人口減少を食い止める施策は変わらず行っていきます。一方で、現実は人口減が進んでいます。10年、20年先を見据え、人口が一定程度減る前提でこの島の在り方を考えねばならぬと思っています」
―佐渡市の人口動態を見ると22歳までの若者の転出数が多いものの、結婚・出産適齢期の20代、30代の転入も多いです。
市長「現状の当市の出生数を踏まえると10年後、20年後に人口の自然増は厳しい。これが現実です。だからこそ(社会増につながる)移住・定住に力を入れることに変わりはないわけですが、現実を直視し、減った前提での市政運営が大事になります。
トランプ関税で不透明になりましたが、それまでの日本は景気が良かったじゃないですか。賃金は上がる、株価も上がる。やれ売り手市場だ、やれ人手不足だ、と。そうなると若者の目は東京に向いちゃう。コロナ禍で地方移住の波がやってきて佐渡にも多くの若者がやってきました。しばらくは社会減が少な
めに推移していたものの、令和4、5年度は減少数がやや増え、6年度も多めになりそうです。
よって、移住・定住に頼るだけでなく、若者が島に残って働く環境を整備しないといけません。先行して転入してきた企業や島内で起業した経営者らが島内の高校生に対し、地域の課題設定と解決に取り組む探究活動を行ってくれています。佐渡にも魅力ある仕事があるんだよ、というスタンスで始めた取り組みが、いまでは企業と高校生が一緒になってITの会社を創業するという特筆すべき動きに発展したんです。若者自らが、雇用を生むきっかけを作り始めたわけです。
生まれ故郷に誇りを持ち、仮にいったん島外に出ても『将来は佐渡で錦の御旗を飾るぞ』というような若者も育みたいものです。そのためには地域のことをとことん知り、誇りを持つことにつながるような『地域学』あるいは『地域教育』が必要だと感じています」
―昨年7月に「佐渡島の金山」が世界文化遺産登録されました。その前後における変化についてはいかがですか。
市長「市民が非常に喜んでくれたというのは素直に嬉しいものでした。さらに嬉しいのは、注目されたのが金山だけに留まらなかったことです。
佐渡金山で産出される無名異という土を原料とする佐渡の代表的な焼き物の『佐渡無名異焼』が昨年10月、伝統的工芸品に指定されました。その2ヵ月前の8月には、小木の港町が『重要伝統的建造物群保存地区』に保存されました。小木町は、佐渡で産出された金銀の積出港として整備され、北前船の寄港地として栄えた港町なんですね。
世界遺産の認定に向けた取り組みを通して、金山に関連する文化を認めていただけた。これらを見る目的で訪れる観光客をおもてなししたいと、古民家を改修してホテルを経営し始めたり、飲食店がオープンしたりするなど、新しい動きが生まれています。行政が補助金を出すから、というのとは無関係にこうした動きが生まれているというのは嬉しいものです」…続きは本誌で