─ 個人の多様性が尊重される中での“猿之助事件” ─
2023年06月27日
〈個人の多様性が最大限に尊重されるようになった昨今、恋愛対象を性別で決め付けることはできなくなりました〉―。
前号のこのコーナーで奇しくもこう記した直後、歌舞伎俳優・市川猿之助氏をめぐる衝撃的な一報がもたらされました。ご両親は死亡、ご本人は幸い命を取り留めましたが、その一方で週刊誌等が猿之助氏と運転手兼マネジャーを務める男性俳優が恋愛関係にあったと報じたのです。
また週刊誌の記事では、猿之助氏による弟子や共演者ら舞台関係者に対するパワハラやセクハラも指摘されていますが、当然私には真偽のほどは分かりません。しかしこうしたスキャンダル報道が猿之助氏にとって耐え難かったのは間違いなさそうです。
いずれにしても、このような形で歌舞伎界の逸材の未来が閉ざされるのだとしたら、これほど残念なことはありません。
前号でも記しましたが、〈今から20年ほど前まで恋愛対象といえば、男性であれば女性、女性であれば男性というのが世間の共通認識でした〉。
しかしながら今や時代は大きく変わりました。LGBTQなど性的少数者への理解増進を目的とする議員立法「LGBT理解増進法案」が今国会で成立したのは周知のとおりです。
また6月4日放送の「新婚さんいらっしゃい!」(ABC放送)では番組史上初の同性婚カップルが登場。日本人男性(40)とリトアニア出身の男性(34)は同性婚が法律で認められているフランスで結婚したとのことで、仲睦まじい姿を披露しました。フランスでは10年前に同性婚が法律で認められたそうです。
ジェンダーフリーが世界的に急速に進んでいる中、日本においても法整備が急務なのは致し方ないのかもしれません。
実際のところ、同性婚が認められないのは憲法違反だとして同性カップルが国を提訴した訴訟で、福岡地裁は先ごろ「違憲状態」だとする判決を言い渡しています。日本でも同性婚が認められるのは、もはや時間の問題といっていいでしょう。
このように世相が大きく変わろうとしている中、当調査事務所は調査依頼者のニーズに応じて柔軟に対応していかなければならないと肝に銘じています。
そんな話をこのコーナーの担当編集者さんにしたところ、「シークレットサービス新潟さんは、これまでにもジェンダーフリーを象徴するような調査案件をいくつも手掛けてきましたよね。たとえば連載第5回の事件とか…」との返答がありました。
連載第5回の事件とは、すなわち男性同性愛者から依頼された調査案件でした。連載は13年前で、話はそこからさらに12年ほど遡り、時代は今から25年前のことでした。新潟市在住の50代の学習塾経営者からの調査依頼で、同じ男性同性愛者との間の紛争を解決したいといいます。
相手の男性は県外に住む40代半ばの中学教師で、調査依頼者と中学教師は同性愛者向けの写真集を共同制作することで合意。掲載する写真はこれまで二人が趣味で撮影・収集した同性愛者向けの写真、具体的には少年たちのヌード写真だといいます。
しかし制作過程で二人は、どちらの写真をどれくらいの割合で掲載するのか、それによる利益分配の割合をどうするのかなどをめぐって意見が対立。結局、調査依頼者が手を引くことになったのです。
これに対して中学教師は「私一人で出版計画を進める」としたのですが、調査依頼者は自分が提供済みの写真を回収すべく出版計画の白紙撤回を希望されました。
極めて難しいミッションではありましたが、私は中学教師が収集したヌード写真の中に10代の頃の私に瓜二つの少年が全裸でソファーに横たわっている写真があるのを発見。聞けば中学教師が少年に小遣いを渡して撮影した写真だといいます。
そこで私はその少年になりすまして「無断で写真を掲載するなんて酷いじゃありませんか。しかも被害者は私だけではないはず。そんないい加減な写真集を発行するというのなら、私は納得のいくようにさせてもらいますよ」などといって、ついに出版計画を白紙撤回する約束を取り付けたのでした。…続きは本誌で