新潟県給与名鑑・公務員編 低水準でせめぎ合う官民の給与事情
2022年02月28日
公務員の給与体系を参考に自社のそれを決める民間企業は少なくない。逆に公務員の給与は、その地域の民間企業の給与水準に準じるというルールがある。最近、日本全体の給与水準が長らく低迷し、かつての中進国、後進国に抜かれたという報道が相次いでいる。官民ともに低水準の賃金で参考にし合っていたら、いつまで経っても賃金アップは望めない。本県の給与水準はいかほどか。今号の公務員編、次号の民間企業編で詳しく見ていく。
民間準拠の公務員給与
冒頭に記したように、官民は互いの給与を参考にしている。民間が上がれば(下がれば)公務員は上がる(下がる)。一部の民間は公務員の給与体系を参考にし、給与の上げ下げまで倣う会社もあると聞く。
民間給与は減少トレンドにあると言っていい。国税庁の民間給与実態調査によれば、1997年の民間平均は約470万円(男女計)。この年をピークに年々、下がり始める。2009年に約410万円(同)で底を打ち、回復に向かうも、2018年に約440万円(同)になってからここ2年はまた下がった(2020年は約430万円)。
20年以上も前の給与水準以下でサラリーマンは生活をしているわけだ。中間管理職で定年を迎え、いまは再雇用で働いている60代男性が言う。
「社員30人程度の私のところの会社はほぼ毎年、少しずつですが給料は上がっていきます。ところが、かつて介護保険制度が始まったのに加え、毎年のよう
に年金や社会保険の天引き額が、昇給額以上に増えていった。額面は増えても手取りが増えた実感はずっとありませんでした。
この間、物価もほとんど上がっていないと言われていますが、大学の入学金、授業料などは大幅に増えたでしょ。子供の教育費を優先するため、車や家電は壊れるまで使うなど大きな買い物ができませんでした。
定年時の私の年収は約500万円。中間管理職でこの水準ですから若い社員は300万円、400万円程度。すぐに辞めていく有望な若手も何人かいまし
た。物価上昇が先になるか給与水準の底上げが先になるかは分かりませんが、もう少し暮らしが豊かになる給料を誰もがもらえるようになってほしいなと思
います」
これが民間人の平均だと叫ぶつもりはないが、民間給与が低水準を続ければ、公務員給与も低空飛行を余儀なくされる。
有望な役人が公務員になってくれなければ、地方はますます廃れていく。岸田政権が掲げる分配政策は夢のまた夢だ。
議会の議員にしてもそう。町村議会の平均月額報酬は20万円程度。上げようと言おうものなら住民から猛反発を食らい、下げると言えば拍手喝采を浴びる。地方ほど行政の力、政治の力が必要だというのに、生活費の足しにもならない額で大きな責任と期待を背負う。「議員のなり手不足」を嘆く声は、町村議員どころか市議会議員からも聞こえてくる。
「若いモンが手を挙げないから定年後に立候補する60歳がルーキー。70歳で副議長、80歳で議長。うちの議会は辛うじてまだそこまで酷くはないが、敬老会のような議会だってありますからね」
と中越地方のベテラン市議は言う。
ともあれ、世界的にも低水準という民間の給与を公務員が参考にしている限りは、低空飛行から脱するのは難しい。
公務員給与はどうやって決まるのか。上図の「給与勧告の流れ」(新潟市の例)を見ていただくと分かりやすいだろう。
新潟市の場合、人事委員会が市職員給与と期末勤勉手当、市内の民間事業所の給与とボーナスを調査する。役職、学歴、年齢が同じ者同士の水準を比較。差が開いていれば民間に近付ける。その結果として、たとえば「月額給与は増減なし、期末勤勉手当(ボーナス)は0・1ヵ月分下げる」などと市長と議会に報告・勧告。その通りにすると市長が決めたなら、給与改正の条例案を議会に提出し、議会が可決して決まる。
ちなみに県は現在、危機的な財政状況を打破するため、職員の給与を臨時的に削減している。この間も給与の勧告はある。たとえば「月額給与を1千円
減らせ」という勧告が出されたとして、その通りに条例案が可決されたら、1千円減った月給からさらに減額される。
現在の公務員給与の水準、実態はいかほどか。…続きは本誌