高市新総裁を選んだ自民党員の選択と党再生への道筋
2025年10月27日
10月の自民党総裁選は高市早苗氏の当選で幕を閉じた。2度の国政敗北を経て、党員たちは何を考え、なぜ高市氏を選んだか。新潟県立大学の田口一博准教授は「逃げた支持層をどう取り戻すか」という1点に、党員たちの理性的な危機感が表れていると語る。物価高と支持層離反、地方組織の停滞──。党員投票の動向や判断理由、また参院選以降の支持層動向と党再生への課題は、地方の視点から国政を読み解くうえで重要なテーマと言えよう。
「当たり前」の帰結としての高市選出
10 月の自民党総裁選で高市早苗氏が新総裁に選出されました。政治学者として冷静に観察すれば、この結果は「当たり前」だったと言えます。5人の候補者の中で、2人(小泉進次郎氏、林芳正氏)は石破政権の継承を公言していました。しかし、2回の国政選挙で敗北した政権の路線を続けるというのは、率直に申し上げて理にかなっていません。
残る3人の中で、いま国民が直面している最大の課題である「物価高」に対して明確な答えを示したのは高市氏だけでした。
高市氏の政策提言で特筆すべきは、ガソリン税だけでなく軽油引取税の暫定税率見直しに言及した点です。これは他の4候補が明確に触れなかった論点でした。
都市部では自家用車を持つ人は限られています。たとえば東京23区では、駐車場代だけで月5万円から10万円かかるからか、その保有率は2〜3割程度です。ガソリン税の減税は、ある意味で「勝ち組」への優遇策になりかねません。一方、軽油引取税はトラックや路線バスの燃料に関わります。これを引き下げれば、物流コストが下がり、運賃や商品価格の抑制を通じて全国民に裨ひ益えきします。
軽油引取税に言及したことは、地方圏と大都市圏の双方に配慮し、なおかつ「よく勉強している」というメッセージを党員に伝えることに成功したと言えるのではないでしょうか。
今回の総裁選で、新潟県は全国3位の投票率(約75%)を記録しました。1位は高市氏の地元・奈良県でしたが、地元候補がいない新潟県がこれほど高い投票率を示したのは注目に値します。
これには2つの解釈があり得ます。1つは、県連や地方議員が組織的に動いた結果。もう1つは、党員数が減少し、コアな支持層だけが残った結果です。正解は、県連幹部らに直接確認する必要があります(本誌注、141頁の囲みに髙橋直揮・自民党新潟県連政務調査会長へのインタビューを掲載してあります)。いずれにせよ、何らかの組織的動きがあったのか、あるいは党員一人ひとりが危機感を持って自発的に投票したかのいずれかでしょう。…続きは本誌で













