原発県民投票条例案「否決」から考える「民意」とは
2025年05月27日
柏崎刈羽原子力発電所の再稼働の賛否を県民投票で決しようと14万筆超を集め、県民投票条例の制定を求めた直接請求は県議会で否決された。直後、SNSでは否決した県議会や再稼働肯定論者を罵倒するコメントが相次いだ。原発再稼働については、県民の意思を確認する方法が必要だとするメディアもあった。ここで湧く疑問は、「民意とは?」である。条例案否決に、県民の意思は反映されていなかったのか。
14万筆の重み
4月18日に県議会が条例案を否決しました。当然ながら県民投票を希望する県民、希望しない県民はどちらも一定数いるはずです。ところがあるSNSでは、特に再稼働に否定的な意見の人たちが肯定的な人たちに対し、強い口調で時に罵っているように見える意見が相次ぎました。たとえば次のようなものです。
県民投票に税金を使わずに別なところに使ってほしいとする意見に対し、
「そんなことネ~ヨ、アホやろ」
中国からの黄砂が時々、日本に被害をもたらしていることから、中国の原発が事故を起こしても同様に恐怖と書き込んだ意見に対しては、
「中国の原発が飛んだら心配? アホか。柏崎は世界最大の原発密集地でずさんな管理ばっかり。テロリストが何かやらかそうと思えば何でもできるぞ。廃炉しかないだろ」
こんな意見もありました。
「柏崎刈羽原発は首都圏を動かすための施設。海ほたるの脇にでも移設しろや」
「再稼働させて何かあったらあなた責任取れるの?」
主張の中身はともかく、強い口調で対立する意見の人たちに相対する姿勢について、皆さんはどうお感じになりましたか?
SNSの主張を見ると、「自分たちの正義が認められなかったから騒ぎ立てたのではないか」とか、「一方の意見を罵倒する行動で自分たちの存在感を示したのではないか」などと推察できます。
対立する意見に遭遇した時は、どちらが自身の「普通の感覚」に近いのかを見極めることが大事になります。騒ぎ立てたことや罵倒することが普通の感覚に近いと思うのか、いやそれは普通の感覚ではないと思うのか。普通の感覚とは、多数の人が感じる感覚とも言えます。改めて、どうお感じになりましたか?
ここで冷静になって振り返ってみましょう。
まず、新潟県の有権者数を確認すると、今年3月時点の選挙人名簿登録者数(以下、有権者数)は約181万人です。県民投票条例案を求めた署名は14・3万筆集まりました。有権者数の約8%です。
前回の県知事選の投票率は49・6%でした。得票数は当選した現職知事が70万票、落選した候補が20万票。いずれも現職知事の、有権者数に対する得票率は約39%、投票数に対する得票率は約77%でした。
前回の県議会議員選挙の投票率は約46%でした。
県知事や県議会の構成は、有権者の約半数が投票した結果、選ばれ、もたらされたものです。言うなれば民意の結果です。
改めて記すと、原発再稼働の是非を投票で決めるべきだと署名した人は8%です。1割にも満たない以上、多数とは言えないでしょう。特殊な意見とさえ言えます。特殊な意見だからこそ、騒ぎ立てて自分たちの存在感を示したかったのではないか。そう推察するのです。…続きは本誌で