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2022年08月9日

ナゾの患者のがん見落としで高額賠償金を支払った無責任市長

2021年12月27日

患者の権利意識の高まりを背景に、医療過誤訴訟が急増している。ところがこれから紹介する一件は法廷で争うことなく、病院側が患者の遺族に対して総額6200万円もの高額な賠償金を支払うことで和解した、極めて稀なケースだ。その背景を取材すると、市民が激怒必至の驚くべき真実が浮かび上がってきた(※下越地区の某市で実際にあった事件を基に再構成したものです)。

 

6200万円で遺族と和解成立

 

この一件の舞台となったのは、下越地区の某市立総合病院だ。簡単にいうと、定期検診を受けた同病院職員の肺がんを見落として死亡させてしまったとして、病院側が6200万円の損害賠償金を支払うことで遺族と和解したのだ。

 

以下は、この事実を伝えた新聞記事を要約したものだ。

〈――市立総合病院が2002年12月、定期検診を受けた同病院に勤める50代の男性職員の肺がんを見落としていたことが発覚した。胸部レントゲン写真にがんの陰影が写っていたにもかかわらず、二人の内科医がこれを見落としていた。

 

男性職員は翌年2003年7月に検診を受け、このとき初めて肺がんが発見された。しかしその時点で肺がんは摘出不可能な状況にまで進行しており、もはや手遅れだった。

 

男性職員は2008年3月に死亡。病院側は肺がんを見落としていたミスを認め、遺族に対して総額6200万円の和解金を支払う方針を決めた。〉

 

先にも記したように、病院側は裁判で負けて損害賠償金を支払うハメになったのではない。あくまでも遺族との話し合いのみによって、自ら6200万円もの高額な和解金を支払うことを決めたのだ。無論、市立病院のため和解金の支払いを決めたのは市当局だ。

 

記者の知るかぎり、裁判を経ることなく病院側が遺族にこれほど高額の和解金を支払うケースは聞いたことがない。ある民間医療機関の関係者は以下のような感想を口にした。

 

「このような大盤振る舞いは公立病院だからなせるワザでしょう。いくら医師に過失があったにしろ、病院側としてはなんとか賠償金を減額しようと抵抗を試みるのが普通で、大方のケースが裁判にもつれ込むものなのです。裁判もせずに病院側がハナから過失を認めて賠償金を支払うなど、民間病院では絶対にあり得ません」(新潟市の民間総合病院の医師)

 

遺族に6200万円の和解金を支払うにあたって、市は事前に市議会の了承を取り付けている。市議会議員の面々にしても、
果たして十分に精査したうえで予算案を可決したのかどうか極めて疑わしいところだ。

 

事実、ある市会議員は記者の取材に対して、以下のような頼りない返答に終始した。以下、一問一答だ。

 

――議会は、市が遺族に和解金6200万円を支払うことを了承していますが、市当局から詳しい経過説明はなされたのですか?

「それについてはオタクが議会を傍聴した以上のことは、当局から説明がなかったです。こちらは市長が補正予算に和解金6200万円を盛り込んできたので、問題なかろうということで賛成したと…」

 

――議会として、議員として、まったく市当局に対する監視機能を果たしていないのでは?

「そういう指摘は心外です。厚生常任委員会の場でも、当局とは情報交換をしていますので」

 

――その結果、具体的に得られた情報は?

「病院側に相応の医療過誤があったとの話でした。このため、われわれ議会としては市当局の補正予算案を了承すべきとの結論に達しました」

 

――医療過誤の中身が具体的にどのようなものだったのか、まったく把握しないまま6200万円もの補正予算案を了承したのではありませんか? そのような仕事ぶりでは市民の負託を受けた議員とはいえません。

「失礼な! オタクはどこの社の記者さんですか? オタクの質問は物事を面白おかしく書こうという意図がミエミエだから、迂闊に取材に応じることができない。悪いけど、これ以上オタクの取材は受けられない」

 

一方、和解金6200万円のうち、まるまる全部が公金から支出されるわけではない点に触れておかなければならない。

 

というのも医療機関や医師は万一、医療ミスを起こして損害賠償責任を問われたときのために備え、医師賠償責任保険(医賠責)という保険に加入しているのだ。医賠責は病院が加入者となるタイプと、開業医向けに医師個人が加入するタイプの2種類がある。

 

当然ながら同病院は病院組織として保険加入していたことから、和解金6200万円のうちの6000万円が保険金で賄われたという。

 

裏を返すと、血税たる公金の支出は200万円にとどまることから、議会でもさしたる反対の声が上がらなかったものとみられる。…続きは本誌

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