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2024年04月16日

元祖生原酒 菊水酒造の米市場開拓物語

2019年12月27日

ほぼ四半世紀前、意外な接点から始まった菊水酒造の海外進出。その最重点ターゲットはアメリカ市場だ。同社の看板商品は言わずと知れた「ふなぐち菊水一番しぼり」。アルミ缶入りのこの生酒、ニューヨーカーの間でもウケていて、「缶で飲むのがクール(カッコいい)」ってことになっている。さらに「升酒に盛り塩」で日本酒を楽しむアメリカ人だっているという。同社のアメリカ市場開拓は、先行投資から本格的な事業へと発展しつつある。

 

平成最後の大記録達成

 

ここ数年、「日本酒ブーム」と言われる。だが話題になるのは「獺祭」(だっさい、山口)、「新政」(秋田)、「而今」(じこん、三重)、「十四代」(山形)などなど。「越乃寒梅」が「幻の酒」と言われ、その頃から続いた「辛口ブーム」とは一線を画すハイグレードの日本酒だ。

 

「ブーム」とは言うものの、日本酒の課税移出数量(出荷量)はピークだった1973(昭和48)年の177万㎘から、2017(平成29)には53万㎘と、3分の1以下にまで落ち込んでいる(各種数値は国税庁『酒レポート』による。以下も同じ)。

 

酒類の消費数量に占める日本酒の割合も下がり続け、かつて3割近くあったものが1989(平成元)年には15・7%、2016(平成28)年には6・4%にまで落ち込んでしまった。

 

暗い数字ばかりを並べてもしょうがない。日本酒に関連し、目を丸くしてしまうデータがある。それが輸出金額と数量の伸びだ。日本酒の輸出金額は2018(平成30)年が約222億円(対前年比119・0%)で、9年連続して過去最高を記録。2009(平成21)年が71億8千400万円だったから、9年間で約3・1倍に急増したことになる。この「200億円超え」について、日本酒造組合中央会は「平成最後の大記録!」と胸を張った。

 

数量ベースでは2007(平成19)年が約1万1千300㎘で、2018年(平成30)年が約2万5千700㎘と、2・27倍の伸び。

 

〈数量では、一升瓶(1・8 ℓ)に換算すると約 1400万本。一升瓶(高さ約40㎝)を並べた距離に換算すると約 5,600㎞(東京─アラスカ・アンカレッジ間に相当)に達する計算となります〉(2019年2月、日本酒造組合中央会発表)

 

国別では金額・数量ともアメリカが断トツの第1位。次いで、韓国・中国・台湾・香港のアジア諸国がランクインしている。中でもは中国の伸び率は2016年から2年間で248%(金額ベース)と驚異的だ。

 

東日本大震災での原発事故を受け、中国は我が国の東北地方や新潟など、10都県からの食品輸入を制限し続けている。本県ではコメこそ解禁されたものの、日本酒を含む食品は未だ全面解禁されていない。早期の解禁が望まれるところだ。

 

寿司ブームの仕掛け人現る

 

さてここからが本題だ。日本酒を製造する蔵元の数は本県が全国第1位。お堅い国税庁の表現でいう「清酒製造免許場」の数は99(2018年)で、県酒造組合には89の蔵元が加盟している。2位は長野で74蔵だとか。

 

県酒造組合の発表によれば、2016(平成28)年、本県産日本酒の海外輸出数量は238万ℓで、対前年比7・4%増。2007(平成19)年が64万ℓだったから、9年で3・7倍強になった。主な輸出先は韓国やアメリカ、香港・マカオとなっている。中国の名が見えないのは、前述の理由による。

 

和食ブームにも乗り、日本酒の輸出は全般に好調だ。だが黙って座っていて、海外から買いに来てくれるわけではない。県内にある多くの蔵元が積極果敢に海外市場の開拓に乗り出している。新発田市の菊水酒造は元祖生原酒の「ふなぐち」で知られる県内有数の蔵元だ。1881(明治14年)の創業で、現在の髙澤大介社長は5代目。

 

菊水酒造は「マーケティングに強みを持つ」、「ターゲットを明確にした、エッジのきいた商品群に定評あり」などと評される。同社でもアメリカに現地法人を設立するなど、海外市場の開拓に注力している。そのきっかけだが、「マーケティング戦略の観点から…」といったものではなく、いかにもアナログな偶然の縁から始まったという。…続きは本誌に

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