• Clip to Evernote

2024年04月25日

瀬波温泉・汐美荘が大江戸温泉物語グループ入り!

2019年09月27日

瀬波温泉(村上市)は県内でも人気が高い観光スポットだ。その地を代表する温泉旅館の一つが、「夕映えの宿 汐美荘」。創業から55年、広く県民に親しまれ、「夕日の美しい宿全国№1」に選ばれたこともある。その「汐美荘」だが、来年1月に全国で温泉旅館やホテル、温浴施設などを展開する「大江戸温泉物語グループ」の傘下に入ることが明らかになった。

 

来年1月上旬に事業譲渡

 

村上市の瀬波温泉には十数軒の温泉旅館などがある。中でも8月1日に創業55年を迎えた「夕映えの宿 汐美荘」(91室、浅野謙一社長)は、規模や知名度などから同温泉を代表する施設の一つとなっている。

 

「夕映えの宿」の名が示すとおり、「汐美荘」は日本海に沈む夕日を堪能できることがその特長でもある。エントランスロビーの波打ち際に面した部分は、全長100メートルというガラス張り。そこから日本海を目の当たりに臨むことができる。客室はすべてオーシャンビュー。2009(平成21)年、日経新聞・日経PLUS1〝何でもランキング〟で、「夕日の美しい宿・全国№1」に選ばれたこともある。

 

結論から言えば、「夕映えの宿 汐美荘」は、「来年2020年1月上旬をめどに、『大江戸温泉物語グループ』に事業譲渡し、再スタートする」(浅野謙一社長)という。

 

「大江戸温泉物語グループ」(東京都中央区)は国内40カ所近くで温泉旅館やホテル、温浴施設などを展開している。新潟の近県でいえば、福島県会津若松市の東山グランドホテル、栃木県日光市の鬼怒川観光ホテルなどが同グループの温泉施設だ。各地で経営が立ち行かなくなった温泉旅館などを取得し、それらを再生するビジネスモデルで成長を続けることで知られている。

 

「汐美荘」がある瀬波温泉だが、例えば新発田市の月岡温泉などと同様、石油の掘削をきっかけに、日露戦争が始まった1904(明治37)年に発見された。この地に温泉旅館が営業を開始したのがその3年後。同温泉は112年の歴史がある。

 

「夕映えの宿 汐美荘」が誕生したのは1964(昭和39)年8月のこと。先代で創業者の浅野昇四郎が、海水浴場の入り口に敷地400坪ほど、14室の小さな旅館を開業した。先代の昇四郎氏は高校の教員免許を持った人物でもあり、現社長の謙一氏を含む二人の息子を大学に出してやりたいという思いから旅館を始めたのだという。

 

旅館新築中の6月、新潟地震に襲われたものの、無事開業に漕ぎ着けることができた。その2カ月後の10月に開催されたのが前回の東京オリンピック。今年6月、瀬波温泉がある村上市で震度6強を記録する新潟山形地震が発生した。

 

「汐美荘」が大江戸温泉グループ入りする来年に開催されるのが2回目の東京オリンピックと、何やら因縁めいている。

 

国内で総合35位の宿

 

誕生から55 年を迎えた「夕映えの宿 汐美荘」だが、「ホテル汐美荘」として法人化したのは1971(昭和46年)のこと。その翌年に25室、126人収容として新装オープン。1983(昭和58)年に44室、250人収容となり、現在の91室、500人収容となったのは1995(平成7)年のことだ。

 

観光経済新聞が主催する「人気温泉旅館ホテル250選」で「汐美荘」は常に入選し、「5つ星の宿」に選ばれている。旬刊旅行新聞が主催する「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」でも、2019年の第44回で総合部門35位、料理部門で29位にランクされた。

 

総合部門で「汐美荘」より上位の県内施設だが、4位に「白玉の湯 泉慶・華鳳」(月岡温泉)、23位に「水が織りなす越後の宿 双葉」(越後湯沢温泉)、31位に「ホテル清風苑」(月岡温泉)などが見えるのみ。「汐美荘」は県内ばかりか、国内でもハイレベルな温泉施設として評価されている。

 

「ピンクリボンのお宿ネットワーク」は、乳がんの手術後も、その痕を気にせず旅館・ホテルでの入浴などを楽しんでもらうことを目的に設立された。県内では湯沢町の「水が織りなす越後の宿 双葉」と「汐美荘」の2施設が加盟している。「リボン宿ネット」の設立総会は2012(平成24)年に行われたが、「汐美荘」の浅野謙一社長は設立時からのメンバーでもある。

 

その浅野社長が会長を務めるのが村上市観光協会だ。会員数が250ほどの同協会は、これまで任意団体だったが、今年4月に法人格を取得し一般社団法人になった。

 

8月6日、村上市総合文化会館で第31回の「日沿道新潟・山形県境地区建設促進大会」が開催された。日沿道では新潟側の「朝日まほろば」と山形側の「あつみ温泉」の間、40・8㎞が未整備の状態だ。その早期開通を求めた大会で基調講演を務めたのが村上市観光協会の浅野会長(ホテル汐美荘社長)だった。

 

演題は「観光と高速道路」。山形県の庄内空港へのチャーター便で台湾からのツアー客がバスで瀬波温泉にも訪れていることや、瀬波温泉の宿泊者を、「クラゲ水族館」として人気が高い山形県鶴岡市の加茂水族館に案内している現状などを紹介したという。

 

企業提携で生き残りへ

 

6月18日、村上市で震度6強を記録した新潟山形地震が発生。この地震のため、瀬波温泉では宿泊客のキャンセルが相次ぎ、その後も風評被害に悩まされることになった。この地震によって「従業員を対象とした大江戸温泉物語グループ入りに関する説明会が、当初の予定から延期になった」という。

 

厚労省の「大卒等就職情報WEB提供サービス」によれば、「汐美荘」の従業員数は140人(男性60人、女性80人)。年商は13億円とされる。大江戸温泉物語グループ入りについて、浅野謙一社長はこう言う。「創業から今日に至るまで、50年以上にわたり、皆様の協力を得て、瀬波温泉を代表する温泉旅館として経営を行っております。他方で、ご案内のとおり、各地の温泉旅館事業の経営環境は大変厳しい状況にあります。

 

当社の施設も老朽化してきており、今後のメンテナンス等にも多額の資金が必要になります。このような状況に対応すべく、ここ数年、今後の『夕映えの宿 汐美荘』の経営の在り方、進むべき道を模索してまいりました」

 

温泉旅館事業の経営環境について、県内の同業者はこう言う。

「既に旅行客は団体から家族や少人数のグループ、あるいは個人にシフトしています。ところが温泉旅館側は、かつて大型観光バスで団体客がどんどん入った成功体験が忘れられないんです。いつかまたそんな時代が来ると、ついつい考えてしまう。そこの切り替えができていないため、個人客をなかなか取り込めないでいるんです」

 

国内のホテル・旅館で総合部門35位にランクされた「汐美荘」でも、やはり同じ悩みを抱えていたのかもしれない。

 

「こうした中で、浅野家のオーナー会社として、単独で事業を継続するのではなく、事業基盤、財務基盤がより大きな企業と提携し、アライアンス(企業同士の提携)を組むことが、『夕映えの宿 汐美荘』の『のれん』が守られ、今後の成長・発展にとってベストではないかと考えるに至りました。

 

そこで、企業提携の専門家を交えて、種々協議、検討を重ねた結果、このたび、全国で温泉旅館を展開している大江戸温泉物語グループとの間で、事業用不動産の譲渡等を内容とした事業譲渡契約を締結し、グループ入りをすることになりました。代表取締役浅野謙一としては、素晴らしいパートナーと結ばれ大変嬉しく思っております」 (浅野謙一社長)

 

来年春頃に再オープン

 

ホテル汐美荘の浅野謙一社長によれば、「来年2020年1月上旬をめどに事業譲渡を実行し、グループ入りをした上で、『夕映えの宿 汐美荘』を一時的に休館し、大江戸温泉物語グループのもとで、施設の改修工事等に着手する」という。

 

リニューアル後、大江戸温泉グループとしての再オープンは、2020年春頃の予定。グループ入りに伴い、同社の従業員は大江戸温泉物語グループに移籍する。浅野社長は役員を退くが、引き続き、顧問として、大江戸温泉物語グループとなる当館の運営をサポートすることになっているという。

 

県内の温泉旅館関係者は大江戸温泉物語グループの〝再生力〟についてこう言う。…続きは本誌に

 

 

 

  • Clip to Evernote