「薬が苦い」を研究に変えた新潟明訓中学生
2026年10月27日
「薬が苦くて飲みたくない」。幼い頃に抱いた切実な思いが、やがて医療現場にもつながる研究になった。新潟明訓中学校3年の須貝和奏さんは、新潟薬科大学の研究者らと「食品で薬の苦味をやわらげられるか」を探究。中学生と成人を対象に官能試験を行い、その成果は日本医療薬学会誌『医療薬学』の一般論文として掲載された。10月12日には朱鷺メッセで開かれた第59回日本薬剤師会学術大会で、全国から集まった薬剤師など医療関係者を前に自ら発表した。中学生の素朴な疑問を、大学教員とのやり取りを重ねながら、倫理審査やデータ解析を伴う本格的な研究へ育てた過程にこそ、この取り組みの価値がある。
「薬を飲みたくない」が原点
研究の出発点は、須貝さん自身の服薬経験だった。
「病気を治すために何週間も苦い薬を飲み続けなければならないことが辛くて、『飲みたくないな』と思うことが何度もありました。同じように苦しんでいる人がいるのなら、辛い思いをする人を少しでも減らすために自分にできることはないかと考えるようになりました」
2024年度、須貝さんは新潟大学が中心となって実施する中学生向け科学人材育成プログラム「N―Step新潟」に参加。新潟薬科大学が担当した、糖の種類や温度によって甘味の感じ方がどう変わるかを確かめる実験を経験した。翌年度、「薬の苦味をマスク(感じにくく)する方法を研究したい」と自ら申し出たことから、同大薬学部の宮下しずか助教、神田循吉准教授による指導が始まった。
神田准教授らが先行研究を調べると、チョコレートやバニラ・アイスクリームなど、食品で苦味を抑える方法は知られていたものの、それらを比較した報告や、ティーンエージャーと成人の感じ方を比べた研究はほとんどなかった。「医療人にとって喉から手が出るほど欲しい情報」(神田准教授)であり、研究として成立すると考えたという。
須貝さんが問いを出し、大学教員が「何を比べれば確かめられるか」、「人を対象に安全に研究するには何が必要か」を問い返す。そんなやり取りを重ねながら研究計画を磨いていった。
須貝さんは、
「疑問に思ったことをひとつの研究として検証するためには、ただ調べ学習をすれば良いのではなく、文献調査やインタビュー、官能試験(実際に舐めたり食べたりして、その感じ方を試験する方法)など、想像以上に多くの調査方法を実施し、試行錯誤を繰り返す必要があると分かりました」
と振り返る。試験に使う食品も「一般家庭で取り入れやすいもの」、「4つの味覚(甘味、塩味、酸味、苦味)の観点をすべて取り入れること」を重視して考えたという。
人が実際に味を確かめる官能試験は「人を対象とする研究」である。
「人の舌を利用する、言うなれば『人を対象とした研究』なので、研究に携わる者は実施前に『研究倫理教育』を受講し、一定の水準に達していなければなりません。中学生にとってはこの研究倫理教育の受講が難しいかなと考えていたのですが、須貝さんは難なくパスしましたので、研究を進めることができました」
そう話す神田准教授は須貝さんについて、明確な課題を持ち、自ら調べ、人に聞き、その結果を研究計画につなげた点に「研究者として必要不可欠な能力」を感じたという。…続きは本誌で













