「薬学」から「科学」へ 新潟薬科大学が目指す次の50年
2025年06月27日
2027年春、 新潟薬科 大学は 「新潟科学大学」へと名称を改め、新たなスタートを切る予定だ。薬学・医療を軸に発展してきた同大学は、文系領域へも学びを広げ、4学部7学科を擁する総合大学へと進化を遂げる。背景には、少子化時代を見据えた柔軟な教育体制と、地域社会に根差した実学重視の人材育成という明確なビジョンがある。大学名変更の理由と、その先に見据える未来とは。杉原多公通学長に、大学改革の真意を尋ねた。
薬科大から科学大へ
――大学創立から現在に至るまでの沿革と、現在進行形の大学改革についてお聞かせください。
新潟薬科大学は、1977年に薬学部のみを擁する単科大学として創立されました。新潟県内に薬学教育を担う高等教育機関が存在しなかった当時、「健康の維持・増進に不可欠な薬学を学ぶ場を地域に」という思いから設立されたのが本学の出発点です。
創立25周年に当たる2002年には、応用生命科学部を新設します。薬の前段階にある「食と健康」の重要性に着目し、食を科学する新たな学びの場を設けました。
薬学部と応用生命科学部の2学部体制となったこの頃の本学は、すでに「薬科大学」という名称と実態との乖離が指摘されるようになっていきました。ただ、当時は様々な事情から名称等の変更は見送ることとなりました。
変化の節目が再び訪れたのは2023年です。この年、医療技術学部および看護学部を開設し、四年制教育による本格的な医療系人材の育成に乗り出しました。背景には、従来の三年制専門学校では急速に高度化する医療現場に十分に対応できないという課題がありました。特に看護分野では、全国共通の「モデル・コア・カリキュラム」の導入により、学ぶべき内容が増大しており、教育の質と量をともに担保するには四年制大学化が不可欠と判断しました。
これを機に、付属の専門学校における関連学科は学生募集を停止。大学の中に看護・臨床検査といった医療系学部を新設するかたちで、より体系的な教育体制を整備しました。
学部の多様化が進んだいま、「薬科大学」という名称では、本学の全体像を的確に伝えられなくなってきたことは明白でした。薬学に縁のない学部の受験生や保護者にとっては「薬科大に看護や検査の学部があるのか?」という誤解を招きかねない状況でした。
こうした中、2027年に迎える創立50周年をひとつの転機と位置付け、大学として大きな改革を進めることとなりました。
現在、専門学校で展開している救急救命士課程を四年制大学の学科として再編成し、医療技術学部の中に「救急救命学科」を新設予定です。また、文部科学省の「大学・高専機能強化支援事業」に採択されたことを受け、応用生命科学部の中に「グリーン・デジタル学科」を立ち上げ、食・農・環境・デジタルを横断的に学べる体制を整えます。
2つの新学科の誕生により、本学は2027年度から4学部7学科体制へと移行します。これを機に大学名も改めることにしました。
大学名は「新潟科学大学」です。
1年ほど前から学生・卒業生・教職員などステークホルダー全体を対象にアンケートを実施し、最も多く支持された名称です。薬学だけにとどまらず、医療・生命・環境・デジタルといった多様な分野で、科学的思考をもって人々の生活を支える人材を育成する大学であることを、より明確に社会に示すための決断でした。…続きは本誌で