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2024年03月29日

県財政危機 当局を追及する議会に責任はないのか⁉

2019年11月27日

知事ら三役と県議らに留まらず、減給は、県職員にも及びそうである。県施設の利用料が値上げされれば、花角知事の言う「県民も痛みを伴う」ことになる。それだけ県財政が厳しいという。誰が借金を重ねたんだ? そう聞かれたら関係者は皆、「あの人」と言って泉田裕彦元知事(現衆院議員)を指す。だが、議会はその予算も決算も承認してきたはずだ。責任は双方にあろう。その責任を追及するパワーを別の方に向けよ。

 

泉田氏独特の将来展望

 

多額の借金をこしらえた。しかも交付税措置がない、自前の財源で返済しなければならない借金ばかり。団塊世代の退職金に備えたのが大きかった。結果的に収支のバランスが崩れ、赤字体質に。この穴埋めに貯金を取り崩さなきゃならん。貯金も2年後にはスッカラカンになってしまう。もう新潟県はおしめぇだ…。

 

新潟県をピンチに陥れたヤツは誰だ? すかさず一斉に「アイツだ」と泉田氏を指差したが、「俺は悪くねぇ」とばかり、泉田氏は地元紙に反論。じゃあ誰が悪いんだよ、誰の責任なんだよ、と県議会は責任追及を模索した…という経緯がこれまであった。

 

各所で指摘されたのは、泉田氏の楽観的な経済成長見通し。借金をしても経済が上向けば税収も増え、チャラにできるという目論見だったようだ。高く見込んだ経済成長率に反し、現実はマイナス成長の年もあるなど低空飛行。チャラにできるほど税収が見込めなかったわけだ。

 

県は、10月に示した「新潟県行財政改革行動計画」(以下、「行動計画」)の中で、こうした見通しが「十分でなかった」と記し、時の為政者の責任に触れた。

 

実は、泉田氏の楽観的な見通しは、経済成長だけに留まらない。2015(平成27)年10月に県が示した「新潟県人口ビジョン」。「人口の将来展望」という項目に次のような記述がある(抜粋)。

 

〈社人研の推計では、2040(平成52)年の本県の人口は、179万人程度で、 1920(大正9)年当時の人口規模にまで減少する。様々な社会システムが崩壊し、地域社会の機能が失われていく将来となる。もちろん、このような展望を受け入れることはありえない。〉

 

として、人口増加の3パターンを想定して本県人口の将来展望を示した。この中に、腰を抜かすような見通しが示された。

 

〈2018(平成30)年に県民が理想とする子どもの数 (2・4人)を持てる社会が実現した場合〉

〈2018(平成30)年に年間3万人が生まれる社会が実現した場合〉

 

当時の本県合計特殊出生率(一人の女性が出産可能とされる15歳から49歳までに産む子供の数の平均)は1・47。その3年後に、平均2人以上を生むようになれば…という、到底あり得ない見通しを立てて、人口の将来展望を描いていたのである。ちなみに、2018年の合計特殊出生率は1・41、出生数は1万4509人。人口の見通しも甘すぎた。

 

当時、当コーナーの田口一博氏と誌上対談を担っていただいた田村秀・新潟大教授(当時。現在は長野県立大教授)は、「いつの時代の話をしているのか。身の丈に合った戦略を」と突き放していた(本誌2016年10月号)。誌面には掲載
しなかったが、これを公にした議会を含む県、追及しないメディアらにも批判の矛先を向けていた。

 

こうした泉田県政に明確な「ノー」を突き付けるわけでもなく、県議会は最終的に「よし」としていたわけだ。首長と議会は車の両輪と言われる。どちらも脱輪していなかっただろうか。

 

事実を把握する意味において責任の所在を明らかにする意図は理解できる。議会にはその責務もあろう。だが、やり過ぎればブーメランで返ってもくるだろう。繰り返すが、泉田県政に明確にノーを突き付けなかったのだから。

 

「起債の抑制感覚はないのかな」

田口准教授の講義を始める前に、泉田氏の起債に関する考え方を県会で問うた場面がある。

「起債を抑えようといった発想は、私が近くでお聞きしている限りでは、あまりないのかなと考えております。新年度の予算編成方針では、歳入の部分では県債の有効活用、そして資産の流動化ということがうたわれております。県債の有効活用ということで、資金手当債、退職手当債ですとか、投資事業の通常債のすき間を埋める行政改革推進債を積極的に、また可能な限り活用した上で、財源を捻出することにより、可能な限り県民サービス向けの歳出に充てるといったような考えで近年は予算編成しておりますので、知事は起債に対する抑制感覚はないのかなと思います」(平成22年9月定例会 総務文教委員会における財政課長答弁)

 

総務省は毎年、「決算カード」を取りまとめて公表しています。全都道府県、全市町村の毎年度の決算が公表されています。

 

平成19年度分から、4つの指標から成る「健全化判断比率」という指標が記されるようになりました。この中に「将来負担比率」という指標があります。将来支払っていく可能性のある負担の現在残高を指標化したものです。将来、財政を圧迫する可能性の度合いを示す指標です。数字が高いほど将来の負担が多い。都道府県は400%、市町村は350%がレッドカードで、超えると「早期健全化団体」となって自由な財政運営ができなくなります。…続きは本誌に

 

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