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2019年12月12日

「新潟コシ1等米比率20%」の衝撃

2019年10月26日

令和元年産新潟コシヒカリの等級検査の途中結果が10月16日、公表された。検査の進捗率約6割の段階で1等米比率は20・0%。過去最低だった平成22年産の20・3%に匹敵する程にヒドイ。後述するように、高温障害が原因と見られている。一昨年の「魚沼コシ 特A陥落」もショッキングだったが、こちらのニュースもインパクトは大きい。新潟コシの評判が悪くなる、望むような価格で売れるか心配だ、収入が減るなど、悲観する向きが少なくない。こんなときこそピンチをチャンスに変える発想が必要ではないのか?

 

真夏の高温で稲が夏バテ

 

平野部で稲作をしている農家は、自身のSNS上に、10月上旬までに刈り取ったコシヒカリは、約7割が1等米だったことを報告した。

 

これを受けてフォロワーは、

「おめでとうございます! 美味しいお米、買いに行きます!」、「ヤバイと言われている中、美味しいお米を作るってさすが〇〇さん!」といった類のコメントを寄せた。

 

この農家はつぶやいた。

「1等米だからといって美味しいお米とは限らないんだよなぁ」

 

とボソり。続けて、

「一般の消費者は、等級と食味(食べたときの美味しさ)は関係ないことを知りません。1等、2等という等級はお米の見た目。問題は食味。食べた人が美味しいって言ってくれないと作り手としては喜べないですよ」

 

夫婦で農業を営む山間部在住の女性は、

「等級検査は美人コンテストのようなもの。女性の見た目と中身が比例するとは限らないのは、殿方がよ~く知っているはず」

 

と笑みを浮かべ、続ける。

「美人がいい女性かどうか分からないように、お米も美人が美味しいかどうかは、食味計で計測したり食べてみたりしないと分からないもの。女性もお米も見た目が9割だなんて言う人がいるようだけど、見た目がいいから全ていいという下心、スケベ心を抱いているだけよ」

 

それでも関係者が1等米比率を気にするのは、

「お米の値段が変わるから」(別の平場の農家)。

 

言うまでもなく、3等より2等、2等より1等が高い。

 

「私が作ったコシヒカリの打率(1等米比率)は幸い、7割超でした。ですから、これを農協に卸せば、1等米としてのお金を受け取れます。でも、食味に関して言うと、あくまで私と家族の舌の感想ですが、昨年産米の方が美味しかった。言うなれば、品質は1等だが味は2等に落ちたようなもの。それでも1等米のお金をいただける。作っておいて、腑に落ちない(笑)」

 

と複雑な胸の内を語る。

 

そもそも本年産コシの品質はなぜ悪化したのか。

 

「(出穂からの)高温条件がその理由だと思います。本年は8月前半の日射と高温が(過去最低の1等米比率だった)2010年より高く、最低気温・地温も高かったようです。加えて台風のフェーン現象が決定的なパンチとなりました」(新潟大学農学部・高橋能彦教授)

 

食味や品質、収量に大きく影響を与える出穂から登熟期は、およそ8月上旬から9月の稲刈りまでの約1ヵ月から1ヵ月半。この期間の水や施肥の管理が極めて重要だという。「9月に行われた東京オリンピックのマラソン代表選手を決めるマラソングランドチャンピ
オンシップでは、暑さ対策のため、選手は途中、給水のほか氷を手にして走っていました。暑いとバテるため、体を冷やしたのです。

 

稲も同じです。冷水を欲しているのに、高温で温められたお湯を吸収すれば、そりゃバテますよ。夏バテした稲はご飯を食べられない、つまり栄養分を吸収できなくなるから育たない。そのほか高温による諸々の要因が重なり、白くなったり、濁ったり、割れたりするお米が頻発するんです」(魚沼の農家)

 

大事な時に夏バテした稲。体力低下の結果、品質劣化につながったと関係者は言う。

 

良食味米のくず米

 

10月上旬、南魚沼市を訪れた。籾殻堆肥を施肥する有機農法を編み出した、専業農家の小野塚喜明氏が言う。

「9月下旬、最初の1等米比率の結果を聞いた。南魚沼のうち湯沢がゼロ、塩沢は1%だった。10月の第2報では湯沢ゼロ、塩沢は2%。これは自分の米もヤバイと覚悟を決めました」

 

小野塚氏は、土づくりに重点を置いているという。田植えをしてからは、…続きは本誌に

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