• Clip to Evernote

2024年04月19日

中速鉄道化で急浮上する羽越新幹線の可能性

2019年07月26日

昨年の知事選で花角知事は羽越新幹線の整備促進を選挙公約に掲げた。同新幹線は富山市から新潟市や秋田市付近を経由し、青森市までを結ぶもの。日本海国土軸の形成に資するものとして期待も高い。だがこれをフル規格の新幹線として建設しようとすると、実現は何十年先になるか分からない。今、「中速鉄道化」という妙案が急浮上し、脚光を浴びつつある。

 

新幹線、三択から二択へ

 

以下は6月定例県議会、建設公安委員会でのやり取りだ。委員会ではそれぞれの分野ごとに、県の幹部職員と委員が一問一答で質疑を行う。

 

小島隆県議(自民、新潟市中央区)がこう聞いた。

 

「フリーゲージトレインが断念された後に、最近になって出てきた言葉で、〝中速新幹線〟というものがあります。これは秋田、山形のミニ新幹線とどこが違うのか」

 

「フリーゲージトレイン」(軌間可変電車)とは、新幹線の標準軌と在来線の狭軌など、異なる軌間(ゲージ、線路の幅)を直通運転できるよう、車輪の左右間隔を軌間に合わせて自動的に変換する電車のこと。新幹線でも在来線でも、異なる幅の線路をスイスイ走ることができる。だがいかんせん車体が重たくなってしまい、新幹線を高速で走れないとか、路面を痛めてしまうデメリットがある。

 

一方の秋田、山形のミニ新幹線だが、これも新幹線と在来線という異なる幅の線路を走っている。実は秘密があって、在来線の外側にもう1本線路を敷いて、在来線に新幹線車両を走らせるというわけだ。フリーゲージトレインなら線路をもう1本増やす必要はない。

 

フリーゲージトレインだが、昨年、政府与党の検討委員会は、長崎新幹線(九州新幹線西九州ルート)の整備のあり方について「フリーゲージトレインの導入を正式に断念すする」とした。この決定は今後の新幹線整備について影響を及ぼすことになった。

 

これまで上越、北陸新幹線のようなフル規格か、秋田、山形のようなミニ新幹線か、そしてフリーゲージトレインか、三つの選択肢があった。昨年の「フリーゲージトレイン断念」によって、これからの新幹線はフルかミニかの選択しかなくなった。

 

そこで浮上しているのが、小島県議が質問で指摘した「中速新幹線」という考え方だった。

 

「中速新幹線とは?」という質問に、県の当局はこう答えている。

 

「中速新幹線の構想について、先日専門家からうかがったところです。主な特徴ですが、新幹線の軌道から在来線の軌道に直接乗り入れることができる格好を取るので、秋田、山形のミニ新幹線と共通しています。

 

もう一つの特徴として、在来線にある各所の信号やカーブなどを改良し、在来線での走行速度を、新幹線と在来線の間くらい、200㎞から250㎞くらいのスピードで走行可能とする、在来線でのスピードアップを兼ね備えた鉄道ということで説明されております。

 

中速新幹線とは(在来線に)直接乗り入れ可能で、在来線のスピードアップを可能としたものです」

 

ここまでの解説では秋田、山形のミニ新幹線と同様の響きがする。ミニ新幹線は、在来線の外側にもう1本線路が敷いてある。「中速新幹線」はどうか?

 

「軌道につきましては、3線軌道、4線軌道、両方が考えられるという説明でした。そのほかの特徴といたしまして、 車両を小型化することで、空気抵抗を少なくし、高速化を図るということもあります」(同)

 

一般に中速新幹線の場合、ミニ新幹線より多い4線軌道が想定されているようだ。魅力的なのは何といってもその事業費。…続きは本誌に

  • Clip to Evernote

関連記事